diary

メイン楽器をEpiphone Emperorに変更した件

私の使用楽器をエピフォンの歴史を交えながら紹介します

Epiphone Emperor 1946年製

このギターは、私が敬愛するグラント・グリーンが使用していた愛器です。もちろん、彼のお気に入りのマッカーティーピックアップが搭載されています。

Epiphoneは、アメリカで最も歴史があり、賞賛されている楽器メーカーのひとつです。現在、EpiphoneはGibsonの子会社となり、主にローエンドモデルを販売しているというイメージが強いかもしれません。そのため、かつてEpiphoneがGibsonのライバルだったことを知らない方も多いようです。Les Paulも「Epiphoneはいつだって最高のギターを作っていた」と語っていたそうです。

少し脱線しますが、私がEpiphone Emperorを使う前にメインで使用していたのは、1968年製のGibson L-5です。このL-5は1922年に発表され、ビッグバンドのリズムセクションで瞬く間に定番モデルとなりました。しかし、当時のEpiphoneが販売していたギターは、L-5に比べると小さすぎ、装飾が過剰だったため、注目を集めたものの、当時の音楽シーンにはあまりマッチしなかったようです。装飾が過剰であったことから、Epiphoneは技術力に自信があったのだろうと推測されます。

EpiphoneはGibsonをライバル視し、L-5の音の広がりやボディの大きさ、トーンに優れたギター作りに影響を受けたラインナップを展開し始めます。

1934年、Gibsonは特大サイズのSuper 400を発売しました。当時のL-5は17インチでしたが、Super 400は18インチとさらに大きくなっていました。(Super 400は400ドルで販売され、アメリカらしいネーミングセンスですね。)

エピフォンは、L-5のボディサイズでGibsonに敗北した経験があるため、翌年の1935年にSuper 400に対抗する形でEpiphone Emperorを発売しました。このEmperorは18.5インチと、Super 400よりもさらに大きいです。

Epiphone Emperorのポスターでは、裸の女性がギターを抱えていて、その体がすべて隠れてしまうほどギターが大きいことをアピールする宣伝文句が使われていたそうです。ほとんど冗談のような話ですが。

しかし、戦争が状況を大きく変えてしまいました。Epiphoneは、1941年の真珠湾攻撃前まで絶頂期にありましたが、1945年の終戦までに会社は甚大な損失を被り、社長も戦時中に白血病で亡くなりました。

戦後、職人たちは会社を立て直すべく、未来に向けて気合を入れて作り上げたのが、私が所有している1946年製のEpiphone Emperorだと言われています。そのため、このギターには、心のこもった丁寧な技術と職人たちの想いが詰まっていると感じます。

その後、顧客の嗜好はカッタウェイやエレクトリックギターへと移り変わりましたが、Epiphoneはその変化に対応できず、伝統に固執しすぎて時代に追いつけませんでした。

1953年、労働者のデモを避けるため、Epiphoneはニューヨーク・マンハッタンからフィラデルフィアへ工場を移転しました。しかし、多くの熟練工たちはニューヨークを離れることを拒否しました。そのため、1953年以降に作られたギターは「ニューヨーク・エピフォン」とは呼ばれないかもしれません。職人が入れ替わり、技術力も低下したと考えられます。

私のEmperorは1946年製なので、「ニューヨーク・エピフォン」と呼べるものです。

Epiphoneは次第に衰退し、1957年にGibsonの傘下に入りました。
エピフォン・カジノをジョン・レノンが使用したことで復活が期待されましたが、現在ではGibsonのローエンドブランドとしての位置づけになっています。

このような背景から、1953年までに作られたEpiphoneは「ニューヨーク・エピフォン」と呼ばれ、マニアの間では非常に人気があります。

さて、もう1本、同じ1946年製のEpiphone Emperorを所有しています。これは、私の前の所有者がライ・クーダーのコレクションから購入したものです。区別がややこしくなるので、こちらをサブ、前に紹介したものをメインとします。

このサブのギターは、ボディのバインディングが浮き、かなりボロボロの状態でしたが、すべてリペアしました。もちろん、こちらにもマッカーティーピックアップを装着しています。

ボディには傷が多かったためか、オーバーラッカーが施されているようです。しかし、ヴィンテージ特有のオーラが漂っており、メインよりもどっしりと重厚な作りです。サイズは変わらないのですが、インレイやエフホールの装飾が違うことから、それぞれ別の職人が作ったものだと推測されます。

音量メインよりもあり、立ち上がりがシャープです。メインのギターは軽く、身体にフィットするので演奏しやすく、グラント・グリーンが使用していたものと同じ装飾が施されているため、メインとして使用しています。

しかし、どちらも素晴らしい作りで、どちらが優れているかを決めることはできません。どちらにも職人の魂を感じる、素晴らしい楽器です。

長い年月を超え、海を渡り、最終的に私の手元に引き寄せられたと思うと、感慨深いです。

ミュージシャンにとって、音楽の方向性やプレイスタイルは非常に重要ですが、それと同じくらい「どんな楽器を使うか」「なぜその楽器を使うか」ということも大切だとしみじみ感じます。

なぜなら、その楽器に対する愛が、音に反映されているはずだからです。

文章を通じて私の音楽を伝えることはできませんが、このギターで奏でた音楽を聴いたことがない方は、ぜひライブ会場で生の音を体験してほしいと思います。